害獣討伐




時はまだ11月下旬。



再び有害獣による屋根裏への侵入を許してしまったものの、
イノシシの肉樹園と名づけられた冷蔵庫の在庫整理と、
網猟への期待を胸に行動し、罠猟を控えていた管理人であったが、
時間の許す限り屋根裏部屋製作に向けてのリフォームも続けるうちに、
すでに害獣が居ついているであろう屋根裏と、人間の利用する屋根裏部屋とが、
ひとつの壁によって分断されようとしていた。

いざ、駆除を決行し、すんなり害獣を討伐するためには、
分断されつつある害獣が巣くう屋根裏側への入り口を設けなくてはならない。




この隙間だらけの通称 四次元古民家ハイドアンドシーク の所有者である管理人の持つ権限ならば、
害獣のうろつく場所への入り口を家のどの場所にも設けることが可能。

だが、ごく普通の家屋に設置されているように、
押入れの天袋から天井裏を覗き見るような形で入り口を設けてしまっては、
罠の設置や撤去にはこの上もなく不都合。

任務をスムーズに遂行するためには二階への中央階段を上がってすぐ!









この分断する壁に堂々と入り口を設けるのがベスト!





設置完了。



これでいつでも任務を決行することが出来る!

それまで余生を楽しむがいい害獣共が!






それから正月も過ぎ、冷蔵庫のイノシシが減り、
網猟ももうやりませんということになり、
念願の狸も捕まえて2月に突入したその頃に、
いよいよ駆除に専念できることとなり罠を仕掛けたのであった。




2月9日


その日、仕掛けた罠の様子を見るため2階への大階段を上がろうとしていたところだった。


むむ!


な、何かが掛かっているようだが・・・・








な、なんて禍々しい凶兆オーラだ・・・・







この世のあらゆる不吉をはらんでいるかの様・・・・!!







無理だ









俺「あまりのストレスにハ・・・ハゲそうだ。。。」


一瞬、登ることを躊躇し、ノヴと同じ境遇を予想した管理人。

しかし、猟暦10年を超える経験と勘から、
害獣の発するオーラに内在された心理的感情を読み取ることができ死線ギリギリで平静を保てた。


有害獣の討伐隊に志願した管理人が知恵を絞って創り出した、
自然界のみで行動していれば決して遭遇することのない、
構造美の究極を追求した罠にはまった自身の現状を、
理性を持たず本能のままに生きてきた野生動物である彼が、
容易に把握できないのは至極当然であった。

それによって流れ出る禍々しくも悲しく果敢無げなオーラ。


「これなら勝てるかもしれん。」  管理人は思った。


躊躇からの思考転換に要する時間は0.1秒を切る。


管理人の強さはここにあった。






念の勝負は100%勝つ気でやる。





100戦練磨の有害獣にとって、未知の罠にはまった不安感を拭いきれず、
刹那とはいえ自身の感情を含ませたオーラを発してしまったことは致命的ミス。

本来であればその実力は害獣の足元にも及ばないであろう管理人に、
「俺の方が強い」と自惚れさせるには十分であった。


思い込みが激しい 故に 最強(最狂)




管理人、大階段を駆け上がると同時に能力を発動






俺「束縛する中指の荒縄ロープジェイル!」




双方ともに合間見えたことなどこれまでに一度もない。

しかし、管理人が階段を登り終えると同時に、
互いがすでに相手を敵としてその視界に捉えていた。


そう。  オーラを感じ取っていたのは・・・・


















ハクビシンも同じ!



同時に臨戦態勢に入った両者であるが、すでに罠にはまっていた事で一手遅れたハクビシン、
管理人によって罠ごと階下へ下ろされ、なす術なくロープジェイルの餌食となる。


ロープジェイルは敵を捕らえ、強制的に絶状態にする。




そんな縄が簡単に具現化できるのか?




否!



この能力を有害獣以外の犬や猫等に使用すると、
管理人は即座に心臓が破裂して死ぬ!
ついでに警察の世話にもなる。 被疑者死亡の書類送検コォース!!




つまり制約と誓約によってその課題を管理人はクリアしていた。






ハクビシン「くっ・・・ どうりでさっきから念が使えねえわけだ・・・」



ロープジェイルによって念能力を封じられたハクビシンと、
ロープジェイルに自身の持つオーラのほぼ全てを込めている管理人。

つまり今の二人は純粋に肉弾での戦闘となることを意味する。


俺「後はこいつをタコ殴りにすれば・・・・」




ここまでは管理人の思惑通り。

だが、それは相手が産まれ立ての子供ガキのような有害獣であったならば。





直後、管理人に戦慄走る。




俺「よ、予想外! な、なんという抵抗力!」




一時の自惚れで自身を最強と思い込んだことにより精神力を強めた管理人であったが、
力勝負になった途端に全てが崩壊、自信喪失、マイナス思考、泥沼、悪循環、負のスパイラル。

絶対的窮地に追い詰められた極度の緊張感が、
管理人に新たな力を産み出させた!









古民家にあった木製バットサヨナラ満塁ホームラン!




俺「ひゃははははははは  ありがとよ!!
  お前のおかげですげー能力手に入っちゃった   おいおいこれ何かわかってる?
  バット!! バットだよ。 迂闊に寄ってきていいのかよ?」





手にした新たな近距離パワー型の能力は、
管理人に今一度自身を最強の立場であると思い込ませ勝負に出させた。

手にしていたロープジェイルを足で保持し、
鹿島神道流の流れを汲む管理人本来の両手持ちの構えを取り、
筋力トレーニングなどしたことのない管理人の上腕二頭筋が、
かつて屋根裏に侵入したハクビシンを捕らえ
撲殺したときの直前に見せた強張りの倍以上に膨れ上がった。


すべては・・・・侵入者を一撃であの世に送るため。




管理人の怒涛の新技炸裂。









俺の血肉になれキャッチ&イート













ドコン!




















中二病のようなもんじゃ。

夢見がちなやつに良く興って、
後になってあの短時間の間にコレだけの遣り取りをしたような気がすると信じ込んでしまう。

あれに近い。








つまり 真相は・・・・








すべて管理人の妄想である。





罠にかかったのを引きずり出して殴っただけ。 ただそれだけのこと。







疲れたから普通にやりましょう。







血抜き。



(な、鍋?? ま、まさか!?)



ちょっとやってみようかな って思ってんのよ。

ブラッドソーセージをな。


イノシシでもシカでもハクビシンでも、
狩猟で獲った固体で作ったという人たちがいないようだし、
獲った固体を無駄にさせない為にもここで俺がやっといてあげないといけないよな。

獲った固体に敬意を表していれば、
その毛皮、その骨、その内臓、その血液でさえ、
粗末にすることに後ろめたさを感じるものだ。




肉だけ切り取って満足してるヤツはハンター失格だぞ!




え?

イタチの内臓???


ナニそれ? ゴミでしょ??







というわけで、今回入り込んできていたのもハクビシンでありました。




調査段階でカメラに写ったのはアライグマだったのに・・・。


この前もそうだけど、見かけるのはアライグマなのに、
いざ仕掛ける段階になると捕まるのはハクビシンなんだよね。

調子イイアライグマのおかげでハクビシンとばっちり って感じだ。

でも、なんであれ有害野郎を仕留めることができたのは素直に嬉しく、
ハクビシンであったこともラッキーでありがたい。


狸のときには感動と表現したけれど、ちょっと違いますね。

感動ではなく・・・・なんと言えばよいか・・・もっとまったく別の・・・。





性交とはまったく別の得もいえぬ快感 みたいな? )







そう。性交とは別の快感。

これが性交と一緒だとか言うやつはさっさと病院行ったほうがいいよな?




(確かに・・・確かにな。)




まぁ俺は違うんだけど、 俺は思うんだよね。

狩猟やってる奴の中には少なからずそんなのもいるんじゃねーかと。

快楽殺人予備軍のような嬉々として引き金を引いてる連中がさ。




(なー。  まぁオメーが言うなよって話だけどな。)





まぁでもコレで一歩近づいたぜ。

とある究極のメニューにな。

材料の一つにハクビシンが含まれてるんだよ。




というわけで、今回は毛皮がもったいないけど、
皮付きで処理する方法にします。



特大鍋にたっぷり湯を沸かし・・・。



沸騰したらハクビシンを入れてちょっと泳がせる。



取り出して毛を引っ張ると、脱毛症のように毛が抜けちゃいます。



ある程度綺麗に毛を抜き終えたら、
腹を割いて内臓を取り出す。

今回はこの内臓も大切だ。




内臓を取り出したら腹をきれいに洗って、
水気をふき取って少し乾燥させる。

表面が乾燥したら最後に細かい毛をバーナーで炙って、
軽く水で洗って水気をふき取れば処理は完了。

冷蔵庫で熟成させましょう。



安らかにお休み ハクビシンちゃん!



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