猪の解体








さて、さっそく持ち帰った猪だが、
解体は家の誰かが手伝ってくれるだろうと思っていたのだけれども、
私が帰るなり・・・・


「おおー! やっと 獲れたか!
 ほんじゃあ 我々出かけるから・・・」


と、全員私を置いてお江戸へ出かけてしまった・・・。


持ち上げるくらい手伝って欲しかったのに・・・。

まぁしかたない・・・・(逃げやがったか??)




まずは重量を量ってみるか・・・

よくさ、狩猟の雑誌を読んでるとさ、
「経験上推定100kg」とか、
「内臓を取り出す前は推定100kg」とか、
推定推定ばっかでおまえらどこまで推定が好きなんだよってあきれるんだよね。


今回の猪は・・・「俺の経験上・・・推定・・・俺より軽い。」




いよいよ活躍するときが来たか・・・。

海外通販で買った重量計。
250kgまで計れる。




ヨイショ!


よいしょの一言で終わってるけど、吊るの結構苦労したんよ・・・






・・・・


あれ? 壊れてない?

85kgとかなってるぞ。

私より軽いと思うんだけどな・・・。



イノシシを下ろし、私がぶら下がってみる。

105kg。


うん。 壊れてる。





ふざけんなよ新品なのに!




でもまあいい。

これで次の計算式が成り立つ。


105kg : 53kg = 85kg : X

105X = 4505

X(猪) = だいたい40kg ってことだな。


(それじゃ推定とかわんねえんじゃん?)

 はいそこだまりなさい。




さて、イノシシを納屋の梁に吊りなおして解体に入る。




やっとこいつらも活躍するな。

皮剥き用ナイフと精肉用フィレナイフ。

獲らぬ猪の肉算用で買っちまってたんだよね・・・。




皮を剥ぐ前に猪の肛門に布切れを詰めておく。



皮剥ぎ。

本当はこれを試したかったのだが、
うちのボロ納屋では、梁が折れて屋根が潰れかねないので断念。



あらかじめ肛門に布を入れていたおかげで、
肛門周りを汚さずに皮剥きできた。



うっすらと脂がのっている。

昔、夏の有害鳥獣で駆除した個体を頂き食べてみたことがありましたが、
硬くて味もしなくて 「これが猪か???」 と正直思いまして、
冬の固体を試さなければと思ってはいたのですが、冬といっても所詮は千葉県。

気温は暖かいほうなので脂なんてたいしたことないだろうと思っていたのですが、
これは思っていた以上に脂がのっていて味も期待できそう。


そして皮剥き終了。




龍槌閃の跡。




頭を切り落とす。

つぶらな瞳。

切り落としの際の骨の切断には、
大き目の金鋸があると便利です。




腹を裂いて内臓を取り出す。

内臓の取り出しは横隔膜を切るだけで簡単に取れる。



小腸大腸。



肺、心臓、胃、レバー、エトセトラ・・・



全部取り出した後、股の間に残る物体。

膀胱です。



これを破いたら台無しなので、
ビニール袋で覆って切り取ります。



さらに股の間の外側に楕円形のものが浮き出ているのでこれを取り外す。



ゴールデンボールです。




ここまで来れたら胴体はとりあえず終了・・・かな?

後は水でよく洗って、熟成のためこのまま吊るして一週間くらい放置しておくことにする。

寒いから腐る心配もハエの心配も無い。


肉の熟成について・・・・

屠畜後、肉は死後硬直により硬くなりはじめ、
最高硬直後に再び元に戻るようになります。
なので硬直ピークを迎えさせ、さらに再び人間の口に合う柔らかさまで待たねばなりません。
ちなみこれは腐敗ではなく、筋肉の脆弱化によるそうです。

このピークは牛で48時間、豚で24時間、鳥で2〜4時間とされています。
そして元の柔らかさになる時間が牛で10日、豚で5日、鳥で0.5日だそうです。

また筋肉の脆弱化は筋肉に張力がかけられているほうが大きく、
丸まるの状態、又は枝肉(背割り)にして吊るした状態が良いとの事で、
と殺してすぐに解体・肉にしてしまうと、筋繊維の収縮が抑えられないので良くないそうです。

食肉として提供できる柔らかさまで待つ期間が必要なわけで、
せめて手・足・胴のように部分肉までの解体ならまぁいいとしてますが、
筋繊維の表面にある薄い膜が腐敗防止にもなるので、
なるべく肉の切り口が表面に出ることを抑え、
できるなら枝肉の状態で熟成を待つことがBESTだそうです。

といっても、実際の流通にのる豚達は、
屠殺され枝肉になったあと、二日足らずで部分肉にされるらしいけどね・・・。

from 味公爵








切り取った頭の天辺をノミでカチ割る。

龍槌閃のおかげで楽だった。


固めの膜に包まれた脳みそがあり、
これをそのまま取り出して膜をはずす。



ノーミソゲット。



頬肉・・・・を切り取る。

いや、首回りも含んでいるから、
魚で言えばカマ? になるのかな。



このうち純粋な頬肉はこれだけ。



さらに頭を上顎と下顎で分離すると・・・



タンゲットー。

残った骨部分はスープの出汁になってもらおう。




後は内蔵を細かく見ていく。

まず気になるのは、なんと言っても 胃 だ。




なんかスゲーぎっちり詰まってる・・・。

押すとその感触は、戻りのない低反発枕みたいな感じ。


話によると有害鳥獣の固体は、
胃の中から蛇とかがたっぷり出てきたと聞いたので、
ちょっと身構えて開いてみたのだが・・・







こ、これは!?











ド、ドングリだ!!!


ドングリの砕けたのがみっちりと詰まってる。

そういや、蛇だの蛙だのってのは冬眠してますもんね。




うまそうなレバー。

血抜きは完璧だ。



レバーにはこんな薄緑色した袋状の物がくっついている。



レバーから奇麗に取り外せる。

胆嚢です。
熊で言うところの熊の胆(くまのい)
鯉で言うところの苦玉

中には液体(胆汁)が詰まっていて、
これを解体時に破いてしまうと肉が台無しになるという。
鯉と一緒だね。

取り外したら水風船のようになっているので、
風船の口を結ぶように入り口を結んで・・・



乾燥させると何かに効くらしいのでとりあえず干しておくことにする。

どうせ干しっぱなしで忘れてしまうだろうけど・・・。




肉厚な心臓。




肺。

さわり心地がプルプルしてて気持ち良い。

なんか・・・・ずっと触っていたい・・・


歯ごたえがいいそうなので、レバー、心臓とともに調理に加えてみよう。




すい臓? かな? と 網脂。



小腸大腸は手間暇が掛かって大変だそうだが、
普通のモツとして美味しいそうなので調理してみよう。



直腸。



直腸にはウンコが詰まっているのだが、
ウンコはコロコロとした豆粒大のものが出口で固まるようだ。









そんでもってとりあえず一週間放置した肉。

手がビトビトになるような脂も、
蝋燭のように固まり切りやすく扱いやすくなっている。

でも肉が氷のように冷たくて・・・・



肩甲骨に沿って肩から腕を切り取る。

あまり形の良い肉は取れないけれど、
煮込みや汁物、炒め物には十分な肉が取れる。




アバラの終わり、腰の始まりにナイフで切込みを入れて、
腰骨を鋸で切断すると・・・・




こんな風になり、さらにこれを半分に割る。




食べ応えのあるバラ肉や背ロースがついている。




残った腰周りと足は真中で切断。



トンカツ(シシカツ?)やしょうが焼きに向いてそうなモモ肉が取れる。




とりあえずこんなもんで終わりかな 解体は。

冷蔵庫にも入らないしうちだけで消費しきれないだろうから、
近所にも配っちまうか。。。

でも・・・たしかダメなんだよな 解体した肉片を渡すのは。
この辺じゃ良くやりとりされてるけど・・・。





残ったガラは、頭骨とともにスープの出汁になってもらおう。




リンパの除去について・・・・

部位を肉片に精肉する際に、
多くの本ではリンパ腺・リンパ節の除去をあげている。

病気にかかっている鳥獣はリンパに肥大等の異常が認められ、
ウイルスが溜まっていたりとかなんだとかあるらしい。

っていうか正直言うと俺にはそれがどこにあるのかよく解らない。
どんなものでどこにいくつ存在してるんでしょうかね そのリンパってやつは?

まぁ・・・・変なものがあったら取り除くぐらいで、
あんまり気にしないでも食べるときに火を通せば、
健康な人間ならとりあえず大丈夫じゃね?

だって・・・



こういう料理はリンパもクソも関係ないだろ?


(いや・・・さすがにクソはとってるだろ?)


いやおまえ、今のクソは言葉の言い回しだローが。





追記:

リンパに関して。

これはアライグマですが、動物は大体同じところに、
同じようなものがあるらしいので。












毛皮。

いよいよ戦士の生皮を被って「地走り」になるときが来たか・・・

おぞましいものよ。



・・・いや、冗談だけどね・・・。


なめしに挑戦してみようしてみようとは思いつつも、
だいたいは毛が抜け落ちてしまい捨てる羽目になっているんだよね・・・







後日、猪料理をいろいろ試したわけだが、
これがけっこういけるんだよね!(臓物に感動)




 俺が食いたいがため & 八つ当たり でお前の命を奪ってしまったけど、
 俺は心の底から 「いただきます」 「ごちそうさま」 が言えたよ。








俺はお前のこと 一生忘れない。






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