投げ突き網



あれからも会社から帰ってからちょくちょく猟場へ出向 き、
5回ほど飛び立つ鴨に向けて網を放つ機会がございましたが、
うまくキャッチするには至っておりません。




やはり今日も浮かんではいるのだが・・・


作戦が悪いのだろうか?

いや、そんなことは無い。

あとは網を放つタイミングの問題だと思うのだ。


今日も作戦通り、
遠距離からサーモにより存在を確認後に、
サイドから忍び寄り、カモが居そうな場所に目星をつけて、
ヘッドライトをオンにして襲い掛かった!


ウガオー!!!




ビビった鴨が飛び立った!



直後、いつもより早めに網を放つ。

俺の方に向かうか、逆に飛び立つか、
それは運に任せることにして、
頭上に突きあげるように網を放った!!





















オオオオオオ・・・・ッッ




ッラァァァアアアアア!




ドシュゥゥゥー


ノーコンの俺による渾身の力を込めた頭上投げ・・・・・














バシー!
























飛び立った鴨の数羽が運良くこちらへ、
放った網はタイミング、方向共にドンピシャで一羽の行方を阻んだ!

ヘッドライトの明かりにより、
頭上で鴨が網にゴールインするのがライトアップされ、
バック背景の暗い闇夜のおかげで劇的に感じ取れた。


う・・・うおおおおお・・・

体がブルブルと震えそうだった。



(寒いもんなー?)



いや、チゲーよ!

それこそ寒さで凍りつきそうだった俺の中の血が、
瞬間湯沸かし器以上の速さで瞬時にグツグツと沸騰して、
鼻から湯気が溢れんばかりにオーバーヒートして・・・


なんだこれ?  なんなんだこれ??







ゴイサギを捕らえた時のように、
手にアタリを感じ取ることは出来ない。

状況としては散弾銃による鴨の撃ち落し猟に近いものなのだろうか、
だがしかし、まるで夜空を見上げて映画のシーンでも見ているかのような光景だった。



獲れたのはいったい・・・・???








うぬおおおおおおお!!!






やったぞカルガモだぁあああああ!!!!!




ひゃはははははー!!!!




やっべーよこれ。 まじヤベーよ・・・





ドラマティックさにかけては散弾銃のはるか上。


獲れる確率でみればかなり低いんだろうけど、
弾代かからないし、夜中に行けば必ずカモには出会えるし、
そのあとの想像をするワクドキ感は相当なものだと思うぞ。


まぁこれは、猟果より過程を楽しめるようになった、
狩猟における素敵なサムシングを求め続けるわたくしだからこそのことで、
獲れなくちゃ意味ねーよ とか 銃を撃つのがストレス解消なんだよ
とかいう人たちにはきっと受け入れられないでしょうなぁ。


あわよくば食えればいいなぁ の趣味の範囲だからな。

俺の猟は。





カモを手にした直後、
再び飼育の考えが頭をよぎった。

何羽か捕獲してこれを飼育して増やし、
合鴨農法のようにカルガモで出来るカモ?


しかし今ケージにはゴイサギが入ってるんだよなぁ・・・・

先着一名様の枠は埋まってるし・・・。


そういえば去年お前逃げたんだっけ?




今年は逃がすかぁーーー!!!




去年の悲劇を思い出した私は、
すぐにポケットにあったチキンナイフでクビチョンパ!


ふっ ・・・

ウコッケイに比べると手応えが無かったじゃねえか。

五体満足なカモにトドメを刺したのは初めてだったが、
なんてこたあないぜ! 所詮は鳥だ!

俺の心に響くものなど何もねえ!!



といいつつ、ウコッケイをあれほど〆ている俺でさえ、
ようやく獲れたうえに健康体であるカモを〆ることに後ろめたさがあり、
鴨血豆腐とかウジが沸くまで吊るそうとか考えていたことをすっかり忘れ、
滴り流れる血をジ〜っと見るだけで時間が過ぎてしまった。



あーこれだよこれ。

罪悪感だ・・・・・  罪悪感。



俺のしている網猟は、鴨が食いたいとか獲るのが楽しいとかであって、
獲らなきゃ死ぬわけじゃないし、趣味の範囲を抜け出せてないんだよ。

まだまだ 俺が生きていくために という意識が足りないんだな。


バイトレベルだけど仕事してて別に食費に困ってるわけじゃなし、
そもそもここは趣味友遊だし、遊び心を持った趣味の範囲なのは仕方ないかもしんないけど、
けど今後、鶏肉は網猟だけで賄うくらいの気持ちで挑戦すれば、
きっとイノシシを仕留めたときのような、
罪悪感とはまた別の感情が多くを占めるようになるんだろうか。。。

今日ここであのカモを捕らなきゃ子供に喰わすもんが無い!

とか、それこそ己以外を養うための猟となると、
イノシシのときみたいな、取っ組み合いになっちまって、やらなきゃやられる!
の場合とはまたちょっと違うんだろうけど、
きっとそこには獲ることを楽しんでる余裕なんてなくて、 「獲れた! やった!」 という感情が多くを占めるようになるのかもしれんけどね・・・。


そう・・・・

趣味友遊とか言って遊んでる間は無理かもしれないけど、
変な同情から来るような罪悪感とは無縁の、
獲れた獲物のその命を奪う時に、
「食糧だ やった! これで生き延びれる!」
と思い、その肉を、すぐにでも胃に補充し生命エネルギーとして取り込みたい、
そう思い、ただひたすら獲れたことへの感謝に尽きる猟、
これもきっと俺が求める本当の猟の精神、
求め続ける素敵なサムシングの正体の一つなのかもしれない。


もっとも俺も含め、今の日本で猟をしてる奴らの中にも、
その精神に近づける奴らはまず一人としていないだろうし、
命どうこうほざいてても所詮、偽善の域は抜けられねえけどな。

それなりの登録料や設備代を払って猟をしてて、
つーかその分の費用が当分の食費に十分なるじゃねえか!
ってのが、今の日本の現状だからな。

どれだけ貧困の差があっても、
バイトしてフリーターしてれば、
普通に食費ぐらい稼げて、食糧が手に入ってしまうのが今の日本。


豊かな発展国の日本での猟ってのは、
うまいもん、変わったもんが喰いてえ、獲りてえってだけで、
そもそも食べるもんに困った奴がやるものじゃねえ道楽だからな。

イノシシの時はたまたま肉弾戦になって、
マジで殺されっかもレベルで討ち取って、
なんかそんな究極の感情に近づけたんだけど、
仮にそんな猟を続けるのだとしたら、
別に喰いもんに困ってるわけじゃないのに、
わざわざ金払ってそんなことして、
あんた頭おかしいんじゃないの?って話だもんな。

食糧も近くに腐るほど売ってて、
金だってないわけじゃないのにわざわざ金かけて命までかけて食糧を獲るなんて、
実際に日本とはレベルの違う貧富の差の激しい国に住んでて、
リアルに命がけで食糧を獲てる人達に対して失礼すぎることだからな。


仕事して、税金払って金かけて猟をしている以上は、
素敵なサムシングな精神には一生近づけねえわ。







となれば開き直って・・・







さっさと食べちまおうぜ。 我慢できん。

つーかこの時期にウジが湧くわけがねーし!!!

吊るしても凍って溶けて凍って溶けての繰り返しじゃねーか!







屠体にして冷蔵庫で一日寝かせ解体。

久々だなー。



ガラで取った濃厚出汁をベースに・・・



鴨南蛮と・・・



鴨雑炊。



そして忘れてはいけない・・・



最強の鴨ステーキ。


血抜きがいいからなのだろうか、
久々の獲物だからなのだろうか?

気のせいかいつもよりなんだか鴨らしい風味が少ないようでいて、
何故かコクはいつもより引き立っているような気がしました。

まぁ気のせいだろう。



そして久々に本物の鴨に舌鼓を打ち、
今後また何かプライドがビチグソになるようなことが起きる前に、
今期の網猟を成功の段階で終わりにするかどうかを真剣に考えている俺であったのだった。




さてと・・・・・





この流れのこの勢いのままこいつも鴨の後を追わせるか・・・・。

もう大食漢過ぎてエサ用意するのが大変。



網猟日誌
狩猟の部屋
TOP
inserted by FC2 system