大脱走






ここは・・・・


  
隙間だらけの母屋に隣接して造られた、
サッシの引き戸と窓以外にはネズミの入る隙間のない、
高級な食器や、乾物、ミソ、漬けもの等を貯蔵しておくための倉庫です。




絶対に開け放し厳禁の扉。




これを開け放してしまったヤツがいるらしい!




倉庫でネズミが横切る姿を目撃した母。

さっそくネズミ捕りを仕掛けたところ、
翌朝にはもうすでにかかってくれました。



俺「ハハハハ。 ばーか!」



つーかモノすげーデケーじゃねーか!!


このサイズは今までで最大クラスかもしれん・・・。

ちょっと写真を撮ろう!

と、カメラ構えて少し近づいたところ、モノスゲー暴れだした。



ガション ガション !


なっっ !!??









ガショーン!!!!



突進の衝撃で蓋が持ち上がり、
ちょっとの隙間にグイグイ頭をねじ込み、
バネの力で押さえている蓋を持ち上げなんと逃げ出してしまった!

えー!?  う、うそだろ・・・・


一瞬の出来事だった・・・・。





夜中のうちにも暴れまわったのだろう。

扉を閉めるため2連のバネのうちのひとつが外れてしまっていて、
罠の持つ本来の威力を失っていたらしい。

加えて俺が登場したことでさらにクソ力が生まれたのだろう。


俺としたことが・・・・




しかしモーマンタイエブリワン。 ここは隙間のない倉庫。

扉さえ閉めてしまえば袋のネズミ。

餌となるものもなければ、やがて餓えてまた罠に掛かるだろう・・・。

とりあえず乾物関係、その他ネズミの餌になりそうなお菓子等をどかすよう母に指示し、
逆にネズミをここから出さないように、開けたら閉めるを心がけて罠にかかるのを待つことにした。


それが二か月ほど前のお話。




ところがしばらくしてもネズミは一向にかからない。

おかしいな〜と中を調査すると・・・・







おい! 乾物が残ってたじゃにーか!!!


なんとカップラーメン2個がまるまる空になり、
やきそばがかろうじて少し残されているだけでした。

これじゃ毎日満腹、罠に掛るわけねーじゃねーか!!!




俺「他にはないだろうね?」


母「あとは大丈夫よ。」


俺「よっしゃ・・・・」





しばらくして・・・・・


それでもまだかからない。



おかしいなぁ〜〜〜と中を調査すると・・・・






おい! こんなもの喰ってやがるぞ!!


タッパーに入れて保存中のオイル漬けを、タッパーに穴を開けて食っていたらしい。

道理でかからねーわけだ・・・・



俺「喰われそうなものはすべてなくしてくれ。頼む。」


母「もう大丈夫よきっと。」



しばらくして・・・・・


それでもまだまだまだかからない。



おかしいなぁ〜〜〜と中を調査すると・・・・





こんなとこまで喰おうとしてんぞ!


なんと酒の空き瓶に詰めた梅酒を、
キャップを破壊して舐めながらなんとか空腹をしのいでいたらしい。

さすがのおれもここまでやられるとは思っていなかった。


そしてついに倉庫からは、かじれる物は鍋やフライパンや瓶など、
齧ればネズミの歯がイカれるだろう物だけになり、
いよいよ生きるためには罠の中の餌しか喰う以外にない状況になったというのに・・・・





それでもまだ何故か一向に掛からない。



これは絶対におかしい・・・・

罠の餌以外に食うもんはねーはずだぞ???












ま、まさか死んだのか???





俺「目につかない食器棚の裏で餓死してっかも・・・・。」


母「ちょっと勘弁してよー。」



そこで家族みんなで食器や鍋とかもすべて出し、
棚もどかして大掃除、死んでればよし、
そのときに現れたら逃げ場はないんだし、袋の中の袋の鼠、
皆で袋ダダキにしてフルボッコにしてぶち殺すという結論に。






8月31日



作戦決行日。



棚をどかせるように、食器集めが母の趣味とも言える大量の食器をすべて撤去。













しかし、ネズミの姿がない。


どっかにいるはずだ! よくさがせ!!!





兄「ああ!!! 何だこれ!!!???」



そして兄がなにやら食器棚の裏に何か変化があるのを見つける。









た、棚をもっとずらすぞ!!!



















か、壁に穴が開いてんぞ!!!




それは間違いなくネズミによって開けられたものであった・・・。




このような羽目板の数ある節の中から、
もろい部分を見つけ出し努力をしたのだ。



その努力は、棚の裏にあたる壁の節々に付いた歯による傷跡・・・・



そして棚裏中に散乱する削り節の量からよくわかる。



ネズミからすれば、棚と壁の間で自身の体を保持し、かつ歯で齧らねばならないわけで、
体力が続かなかったのか、ほとんどが途中であきらめたことが伺える。




そして最終的に、ここぞと決めた節の場所が・・・・・




ちょうど棚の上下をつなげる位置で、
幸運にも足場となるでっぱりがあったのだった!!!


やったぜー!! ^^ 





(って、お前はどっちの味方だ!?)





いや〜  もうここまできたら褒めるしかねーよ。

奴がここから逃げるために捧げ続けた永き時、
その成果、しかと受け取った。





天晴れだ。 誉めて遣わす。

別に上から物言ってるつもりありません。












いや無理。

二度と追跡できないと思う。







マジ俺の完敗です。






餓死寸前で目の前に餌がぶら下がっていても、
一度はまった罠に入って満腹感を満たすことより、
さらに体力を消耗してまで未知の世界を目指すとは・・・・


やつの知能指数は俺より数段上。

知恵だけでなく、パワーと根性とプライドまで兼ね備えたグレートなネズミ紳士だ。





俺にできることは、ダメージを受けた節々にバンドエイド加工で穴埋めすることと・・・


敵でありながらもネズミ紳士の行動に対し、
惜しみ無き賞賛の感情に支配されるのみであったのだった・・・




あ、みなさん引越し作業お疲れ様でした。

お皿とか元に戻しましょう。

それと今度から扉もちゃんと開けたら閉めようね。






開け放した犯人 俺かもしれないけど。







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