処刑日誌 7月29日




「新しい家にネズミがいる!」


妹がネズの気配を感じ取った。


飯を食べたり、テレビを見たりと、
団欒として使用しているボロボロの家とは別に、
私の部屋や洋服部屋、漫画部屋として存在する築30年くらいの準ボロ家。

とは言っても、いわゆる家なので、
どこかを開けっぱなしにしない限りは、
ネズミなどの侵入経路は無いように思えた。


ところが・・・




この押入れの中にいることが判明。



ガラリ・・・

ややや!!



扉や床をかじっていやがる!


なるほど・・・



押入れの上部。



侵入経路はおそらくここだろう。

ここの板を外すと、
一階と二階の中間の屋根裏に通じるようになっている。

この板・・・

ずれたままになっているが、
実はしばらく前に、BSのアンテナを設ける際に、
技師の方がここから1階天井裏に入り込んだことがあり、
開いた状態で放置されたままだったのだ!!!


すでに私も気づいていたのだが、
登るの面倒くさいのでそのままにしておいたのだ。(だめじゃん!)



もともと1階2階間の天井裏は、壁伝いに縁の下などとつながっているらしく、
ネズミの出入りなどはあったらしいのだが、おそらく、ここを開け放してしまったことで、
天井裏という人目につかない場所より降りてきて、押入れに住みついてしまったのだろう。



ぶっ殺してやる!!!
(アンテナ技師さんじゃなくネズミをね。)


さっそく煮干しをセットした罠君を仕掛ける。

残念ながら狭くてセットできない。




横向きにセット。

これがまずかった。

しばらくして、中でカリカリ音がするので、
捕まったかな? っと扉を開けると、
餌をかじられているのに作動していない。


こ、これは!!!

横向きに置いたから、
罠の取っ手部が突っかかってしまっていたのだ。

これはいけない。

そこで押入れの反対側に仕掛けることにして、
(最初からそうしろよ!)
反対側の扉を開けて少し物をどけたり片してから罠を仕掛けて扉を閉めた。


 「さてっ」 と部屋を立ち去ろうとしたそのとき、

何かが視界内で動くのを捉えた!




仏壇のあたりで何か異様な気配が!!


ビクビクビク。





なななな、 なんだぁ!!??







花瓶の花がフラフラ動いている!







成仏できない先祖の霊がさまよっているのか?
(ま、まじで霊現象かとおもったー!)



ら、  花瓶の口元で何かがピロピロと動いている。




ネ、ネズミのしっぽだぁぁぁー!


花瓶の水を飲もうとしてるのか、
中に隠れようとしているのか、
茎をかき分け体を突っ込んでいた。

ちいさい!

捕まえることができるかもしれない。

何か手頃なものはないだろうかと辺りを一瞬見回しているうちに、
やつの姿が視界から消えた。

どこに行きやがった!?

息を殺して仏壇の前に座り込む。

あ、現れたぁ!



堂々と供え物の水を飲んでいやがる!



そしてコーヒーに飛び移った!




なんて罰アタリな野郎だ!!!
(先祖の生まれ変わりじゃねーだろうな。)



まてよ・・・

あの一瞬で花瓶からこんなとこまで来たのか?


ま、まさか!!  数匹いるんじゃねえだろうな!!??


バンっ と手を叩くと目にも止まらぬ速さで姿をくらました。


「おーい!!!」

兄を呼ぶ。


「仏壇にネズミがいやがる! 何匹かいるかもしれない。」


二人で張りこみ開始。

ネズミは堂々と現れ、やはり目前でコーヒーを飲む。


しばらく二人は完全な石と化していると・・・




来た来た来たぁーーー!!!


チョロチョロと床の間の仏壇から離れて、
和室の畳の方へと出てきやがった。


「いまだ!」

っと兄が、仏壇に逃げ込まれないよう、
仏壇側から脅しをかけて部屋側に追い込んだ。

あらかじめ部屋の扉はすべて閉鎖し、
廊下や別の部屋、そして外にも逃げられないようにしていた。

仏壇に逃げ込めないネズミ。
もはや完全に袋のネズミ。

そして待ち構えるは、衣装ケースを抱え爆笑中の私。


オラァ!!!




ゲット!


ぐわははははは!!!



脅威のジャンプ力!!!

そのすばしっこさに加えてこの跳躍で、
あたかも数匹のネズミが存在するかのように思わせることができたのだ。





罠ではなく衣装ケースで捕らえられた小さなネズミは、
その時点で、いつものネズミとの待遇が異なることを意味していた。




煮干しを与えられる。




コーヒーを与えられる。

ウェッジウッドで俺より贅沢だなこの野郎。


そして、こういう系好きの妹の観賞物に成り下がり(成り上がり?)、
翌日私が会社に行っている間に、 御先祖様のご加護を受けながら、外へと放されたそうな・・・


なんて人間は、
気まぐれで身勝手で自己満足に浸れる生き物なのだろうか。

もう戻ってくるんじゃないぞ。
たまたま俺らの一時の気まぐれで命が助かっただけで、
今度は容赦なく殺されるぜ。




その後押入れではネズミが掛からなかった。
おそらくこの仏壇にいた奴が、押入れにいた奴だったのだろう。
私が罠を仕掛けている間のスキをみて外に出てきたのかもしれない。

全然気づかなかったけどな。




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