アナフィラキシーショック




朝の7:45分頃。

未だ部屋でぐっすり睡眠中の俺でしたが、電話の着信音で起こされる。

父からでハチに刺されてしまいちょっと巣の駆除を頼む! と。


たかがハチで起こしやがって・・・・

それぐらいションベンかけときなさいよ!




かの聖書にちゃんと書いてあるじゃないですか。


俺はやらないけど。



まったくおおげさな・・・ と、とりあえず食堂に行くと、
そこには鼻っ面と手首を刺され、顔面の中心部を赤く痛々しく腫らした父がいた。

アンモニアションベン療法が有効と書いてあるけれど、
顔面刺されたときってどーしろっていうのかね?

自分で・・・・ いや、誰かに!?

つーかそうタイミングよく尿意ってのはもよおすもんでもないだろうしなぁ〜。





父「うーイテテテテ。」

俺「ははははー。」

父「カ、カヌーの周りで・・・」

俺「ウッハッハー!」



早速俺はハエ捕りアースを片手に刺された現場に向かい、
蜂の巣の位置の見当をつけてアースを爆射。

しばらくすると、毒ガスの攻撃に面食らったハチ共数匹が、
ブイーんという不気味な羽音とともにいっせいに飛び出してきた。

ガスの直撃を受けたであろう重傷な数匹は、
飛ぶこともできずに鈍い羽音を鳴らしたまま必死に歩き回っている。

「親の仇だ覚悟しろー ひょっほー!」



俺「巣があったよ スズメバチの一種っぽいなー。」


と駆除が済み親父殿の様子を見に行くと、
あれよあれよと体中にミミズ腫れのようにボコボコが出現。







その様子はまるでウェルフィンのミサイルマンを食らい、
卵から孵った黒ムカデが皮膚内でうごめいてるイカルゴの如し。

おまけにさっきより顔面が赤くなっているのに、
なぜだか顔面蒼白に見えるげっそり表情。



母「ちょっと病院行った方が良いんじゃない?」

俺「ちょっとひどいね。病院でなんか塗ってもらえば?
  あ、日曜か。行くなら勝浦の救急病院かね。」



父「お、おう。。。。」



ここで俺は、ちょっとしたアレルギーでたいしたこと無いだろうと、
母もこの日、学生の頃の知人と二人でどこかへ行く約束があり、
グループでのことならまぁ断っても良いだろうけど、二人だけの約束だったので、
もうあちらも電車で向かってるだろうし今さら断るのもどうかと、
まぁ死ぬわけじゃないから私行くわよ。と。

俺は俺でその母を駅まで送りに行かなければならず、
じゃあとりあえずオロナインとかキンカンでも塗って、
病院行くなら兄を起こして連れてってもらってね。と駅まで。



父「お、おう。。。。」








母「まったくこの忙しい時間に刺されるなんて・・・」


俺「今日はトイレの便槽を埋める穴掘り手伝ってもらう予定なのになぁ あれでできっかね?」




などと、まったく人騒がせな なんて話をしながら送って戻ると・・・・・

いつの間にか救急車が来る事態に発展していた。


えー!? たかがハチでやめてくれよはずかしー!!

そもそもムカデに咬まれた時も、痛みに耐え切れず病院へ駆け込んだ父であるので、
まーたそのくらいで119番しやがったのか しょーもねーおっさんだ。


と思ったけど、どうも病院に電話したらすぐ救急車に電話しろみたいに言われたらしい。

父は受け答えはできるものの、机に付したままぐったりして心臓のドキドキと変な息苦しさを訴えている。

ここで、皮膚の炎症でまだたいしたこと無いだろう思っていた俺は、
数ヶ月前、金曜日の朝に死ぬほどの痛みをこらえて病院に向かい、
激痛を訴え検査してもらったものの、医者に、

 「ここまで我慢してこれたなら大丈夫。血液検査の結果はすぐでない。今日はもう帰ってまた来週来なさい。」

と言われ、

 「冗談じゃねえ 痛くて死ぬぞ!」

と紹介された救急病院にタクシーで向かい、再検査の結果すい臓炎と判明し緊急入院、
「我慢して家に帰ったら死んでたよ」と救急担当の医者に言われた兄のこともあり、
じゃあまあ救急車が来たら多少大げさにしとけば? と俺は父に言ったのだが、
救急車が来る頃にはその心配も無くなり、演技抜きでリアルにゲッソリっぽい父がいた。


ハチに刺された痛みと全身のかゆみ、気だるさと吐き気を訴える父、
「名前は?」「生年月日は?」と何度も質問されながら、
救急隊員によってタンカに乗せられ救急車へと移し変えられる。


一応救急車には兄が同乗し、私は後から病院へいろいろ持って車で追いかけるということで、
車両はうわさ大好き野郎いっぱいの農村にサイレンを撒き散らして消えていく。

あーあ、これで近所の暇なジジイババアどもにネタを提供しちまったな。


救急車は行ってしまったがどこの病院に行くんだかは不明で、
救急に指定されている病院といえば勝浦だが、
とりあえず俺は兄の連絡を待つことにしよう。

まさかハチぐらいで入院になることは無いだろうし、
まずは朝飯でも食おうかと準備を始めようとしたときに兄から電話が入り、
今近くの公園なんだけど救急でドクターヘリが到着、このまま鴨川の亀田病院へ搬送 との連絡が!



どどどど、どゆこと?



この時点で、え?結構ヤバイんじゃね?って感覚が芽生える。


まずは、ヘリにバトンタッチし、次の現場に向かうという救急車から、運動場に置き去りにされ、
今家に向かって歩いてるという兄を迎えに行く。

話によると、救急隊員が緊急性が高いと判断し、
処置ができるドクターを乗せたヘリを現場に急行させ処置をしたそうで、
さらに検査も必要ということで父は鴨川に送られたらしい。



兄「意識朦朧で泡ふいてたけど、処置したからもう大丈夫って言ってた。」

俺「もう大丈夫なのになんで鴨川まで連れてかれなきゃいけねーの?」

兄「わからんけどパンツ以外脱がされていっちゃったから・・・・」と


とりあえず兄は自宅に残り、
脱がされた着替えを持って俺は鴨川まで車を飛ばす。



一時間ほどで亀田病院に到着し、
救急病棟みたいなところで車椅子でお疲れな様子だが、すっかり赤みは失せた父に会う。

医師の話によると、ハチ毒によるアナフィラキシー症状で、
ヘリで駆けつけたドクターの治療が早かったので大丈夫とのことであったが、
これはまた12時間くらいして発作みたいなものが出るかもしれないので、
経過観察で今日は入院しましょうということになった。


俺「どうも本当にお手数おかけいたしました。
  注意力も無く根性も無いもんで・・・」

というと、父がギロリと俺を睨んできた。

ふむ。意識もしっかりしているようだ。
まずは一安心。



アナフィラキシー・・・・・



といえば・・・












ハチに限らず食べ物や薬によるアレルギー反応のことで、
何割かの人が発疹や血圧低下、呼吸困難等の重度のアナフィラキシー症状になり、
さらに数パーセントくらいの人がショックでそのまま心停止に陥り、
ハチでの心停止の平均時間は15分ほどだとか。



要するに2回目がヤバいんだろ??







御名答じゃねーじゃねーか!


親父は蜂に刺されたのは生まれて初めてとか言ってんぞ?


どーいうこっちゃ???




と、どうやら話によるとスズメバチに限っては一撃目で症状が出る人もいるんだとか。






ああそーなんだ。 そりゃ気をつけねーと。




父「一時は覚悟しなきゃって思った」  だってさ。


そんなきつかったのか・・・・まぁ死ぬ確率は低いんだろうけど、
下手したら明日がお通夜になってた可能性もあったかも知れなかったわけか。

こりゃーびっくりだ。 マジに。




そして一日入院と聞いて父をまかせて家へ帰ると案の定、
田舎の暇人どもがどーしたどーしたなんださっきの救急車はー?と野次馬。

これなんだよこれ。


田舎のうぜえところはよ。



仮にマジで親父が天に召されて家族がブルーモード&てんてこ舞いになってたとしても、
そこに どしたのどしたのー?? って遊びに来ちゃうのか。

うざさMAX!

もうそこはとりあえず変わりに死んどけよ? って話だぜ。






事故現場



ブルーシートに覆われたカヌーの上に、
ベニヤ板を乗せて畑の道具をいろいろ乗せていた。



そしてベニヤの下のブルーシートがくぼみ、
いい具合に取っ掛かりとなる藁があったために・・・・・・







巣を作ってしまったようだ。





退治した蜂の一部。

キイロスズメバチとかそんな感じ。





そして続ハチ退治。

家の周囲にはスズメバチ、そしてアシナガバチの巣が、
すでに確認していたものがいっぱいある。

しかしわざわざ駆除も撤去もしなかった。

っていうかスズメバチの逆さ徳利タイプは、
ハチの子は食えるし、形もいいしなんか壊すのもったいないし、
何もしなきゃ刺してくるものでもないので放置していたんだけど、
まさか刺されてこんな大事になる軟弱体質がうちの家系にいたとは露知らず。



とりあえず死んでもらって、今後は作るの見かけたら初期段階で即座に破壊してくれるとしよう。






翌日、無事2次発作も起きずに退院した父。

ショックで呼吸困難に陥ったせいか、それともその後の治療薬のせいか、
声が全然いつもと違っている。

けど、それ以外は調子良さそう。




さっそく作業を手伝わせ(鬼!)、
畑の道具置き場兼カヌー台を作成。

鬼じゃねーよ、本人が「声以外は完全復活だ!」って言ってんだもん。

これでハチが巣を作ってもすぐにわかるようになりました。



なおハチ毒の属性が低いと判明した父は、
今後、ハチに刺された際に重度のアナフィラキシー症状に陥る前に、
自分で注射してとりあえず難を逃れる、エピペンと呼ばれるものを常備したほうがよいと言う話で、
近所の病院で講習を受ける予定となっている。

アナフィラキシー症状の場合、
ミミズバレみたいなのが出たからといって、
オロナインとか塗っても全く無駄だそうなので、みんなもそこんとこよろしくだ。

あとハチでションベンもウソらしい。



何かすげー長い時間に感じていたんだけど、電話の履歴を確認すると、
父がハチにやられてからヘリが到着し処置されるまで35分ほどで、
その間に何が一番時間かかったかって、
アナフィラキシー症状が出てから俺らが病院に行けば?
って言うまでが一番時間かかってるじゃんってことです。

救急車到着からドクターヘリの処置までの見事な早さ。


救急車の救急隊員、アレルギー処置のドクター及びその後の搬送をしてくれた君津からのドクターヘリ、
亀田の救急処置のチーム、多くの方々のおかげですっかり回復の父であります。

このうち救急車は無料で、ドクターヘリも判断は救急隊員によるものの費用は数千円、
治療入院費も3万5千円ほどでしたが、
多くが税金でカバーされてるおかげと思うと申し訳なくなります。


父 「払えるなら払いたい! 感謝したい!」と。

だよな〜。

もちろん健康保険を払っているとはいえ、
救急車やヘリなんかは有料でいいと思うぜ。




///////////////////////////////

後日、父が病院で受け取ってきたエピペンなる物。



アドレナリン注射液。


なるほど アドレナリンが効くのかー。




中には本体と練習用がある。



ハチに刺されて症状が出たら早めに、
このように持ってバシッと外モモらへんにぶっ刺すことで、
とりあえずショックを回避できるという。

またハチのすべてが というわけでなく、
これは個人差があり、血液検査によってわかるそうですが例えば父の場合、
ミツバチにはどれだけ刺されてもモーマンタイ、
アシナガバチに対しては中度の症状、スズメバチにはもれなくショックが出るそうです。


ここで刺されりゃいいけど、
つまりどっか行く時は持ち歩けって事なの?


父「まぁそういうことだな。」


うほっ めんどくせー。

これが無いときに刺されたらその場で頑張って興奮して、
体内でアドレナリンを生成すればなんとかなるんかな?



近くに女がいれば服を脱いでもらって
オッパイでパフパフさせてもらうとか?



うおおおお 想像しただけでアドレナリンがぁあああ!!

そのまま安楽死突入モードーぉぉぉお!!




(お前の住む田舎じゃババアしかいないんじゃ・・・)



ぎゃー!! 別のショックで即死する!!!




五目の部屋
TOP

inserted by FC2 system